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血管健康くらぶHOME > 健康情報 > 市民公開講座 > 一瞬の気づきから始める健康食生活 ~第53回日本循環器病予防学会市民公開講座より~

健康情報

 「人生90年」といわれる超高齢社会のなかで、健康寿命を延ばし、元気に生活していくためには、毎日の食生活を見直すことが大切です。わが国の現状、そして、動脈硬化の原因となる高血圧や肥満を予防する食事について、九州大学保健学部門 教授・樗木(ちしゃき)晶子先生が紹介します。


●目次

超高齢社会に突入!高齢者の肉体年齢は若返っている !?

まず、わが国の現状についてお話しさせていただきます。平均寿命が80歳以上の国は、日本、カナダ、オーストラリア、北欧や地中海沿岸諸国に数えるほどしかなく、なかでも日本は女性が世界1位、男性が同5位と"長寿者社会のフロントランナー"といっても過言ではありません。「人生50年」といわれた1950年代、健康管理や優れた医療制度により、わが国はわずか40~50年で「人生90年」時代に突入しようとしています。


しかし、新たな問題が出てきました。高齢者の多くが、介護を受けなければ天寿をまっとうできないという問題です。「平均寿命」に対し、日常生活に制限がなく、自立した生活が送れる期間を「健康寿命」といいます。日本人の健康寿命は平均寿命より10歳程度短く、男性は介護が必要になってから約9年、女性は約12年、制限のある生活を送ることになります。


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死因では、第二次大戦前は栄養状態が悪く、国民病として結核が上位を占めていました。その後、脳血管疾患が増えましたが、国の政策や保健医療により、脳出血は大きく減少。かわって台頭してきたのが悪性新生物(がん)であり、心疾患も大きな死因となっています。また、近年、介護を受けている高齢者の増加で、食べ物を誤って飲み込んで肺炎を起こす高齢者の誤嚥性肺炎も問題となっています。


人口の高齢化は、日本を筆頭に韓国、ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、イギリス、アメリカなど先進国はどこも顕著です。65歳以上の人口比率を高齢化率といい、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を 超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」と呼びますが、日本では1970年頃から高齢化が進み、1994年には高齢社会、2007年には超高齢社会に突入し、2014年には人口の四分の一が高齢者となるなど、高齢化率が一気に高まっています。


一方で、高齢者といっても、肉体的には昔と比べて若返っています。1992年と2002年で高齢者の歩行速度を比較すると、2002年の80歳の人の歩行速度は1992年の70歳の人に相当しており、10年で10歳若返っていることがわかります。現在はもっと元気な高齢者が増えていますので、同様の調査をすれば、15歳は若返っているのではないでしょうか。私の母も90歳に近いですが、食事の支度から孫の世話まで何でもこなし、70歳代の体力を持っているように思います。


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まとめとして、わが国では質の高い保健行政や医療制度の普及により、長寿国家に躍り出るとともに、少子化の影響もあり、超高齢社会に突入しました。これは嘆くことでなく、高齢者は肉体的に若返っており、今後「健康寿命」の延伸を図ることで、豊かな国が維持できると考えています。

脳卒中を減らすために、まず「減塩」から

日本が長寿国になれた要因の一つに、脳卒中の克服があります。1956年頃、70歳以上の全国民の平均収縮期血圧は160mmHgを超えていました。これは200mmHg以上の高血圧の方がたくさんいらしたことを意味していますが、現在はどの世代の平均血圧もかなり下がっています。その背景には、国民の努力で食塩摂取量が減ったことがあります。1950~1960年頃、日本人は1日約17g、東北地方では20~30gもの食塩をとっていました。現在は1日約10gまで減っていますが、ここ数年は横ばいの状態です。厚生労働省は1日8g未満(男性)、7g未満(女性)、アメリカは1日ナトリウム2,400mg未満(食塩6g未満に相当)、世界保健機関(WHO)は2025年までに1日5g未満を目標としていますが、外食産業の普及などもあり、かなり難しいと思います。


減塩について、本学会の前理事長である上島弘嗣先生(滋賀医科大学名誉教授、同大学アジア疫学研究センター 特任教授)が、「ドクター上島の食塩無添加日記」というホームページで、ご自身の食塩無添加生活について書かれています。「野菜炒めにえびを加えるだけ」というような無塩料理の作り方や減塩のコツなどが紹介されていますので、ぜひご覧になってください。
上島先生は定年退職後、奥様の"命令"で「自立訓練」の一環として料理を始められました。最初は面倒だったようですが、料理も皿洗いも日常化すると楽しくなり、「塩分を節約したい」という思いが強くなったそうです。奥様によると、団塊の世代の男性は「おれが先 妻倒れること 想定外」で、食事は用意され、家は整っていて当たり前であり、こうした"家事は女性"という風潮を変えるべく、また、定年後の夫の自立訓練を兼ねて、家事をさせることにしたそうです。料理は認知症予防になり、自分で作ると食に対する意識も変わります。また、血圧が下がれば降圧薬の中止や減量も夢ではなく、上島先生も「無塩食のおかげで降圧薬から解放された」とおっしゃっていました。

肥満の原因は「食べすぎ」ではなく「運動不足」

次の問題は肥満です。肥満度の判定にはBody Mass Index(BMI)という指標が用いられます。BMIは、体重(kg)を身長(m)で2回割ればよく、体重50kg、身長150cmの人なら、50(kg)÷1.5(m)÷1.5(m)でBMIが算出できます。肥満と判定されるのはBMI 25以上(25以上30未満:肥満1度、30以上35未満:肥満2度、35以上40未満:肥満3度、40以上:肥満4度)となります。一方、理想体重ですが、身長が止まった若かりし頃の体重といわれています。


わが国では、男性はどの年代をみても肥満が増加し続けています。反対に、女性はやせ願望が強く、30歳代まではやせが目立ちますが、更年期以降は肥満の割合が高くなっています。
肥満の国際比較をみると、マレーシア、シンガポール、フィリピン、日本、中国、韓国など、東洋人には肥満は少ない一方で、南太平洋の島国・ナウルのように、人口の7割以上がBMI30以上という国もあります。東洋人は肥満になりにくい体質ですが、小太りでもいろいろな生活習慣病を発症する残念な遺伝子をもった民族といえます。


肥満のタイプとして、若い女性は下半身に皮下脂肪がつく「皮下脂肪型」、男性や閉経後の女性は、内臓(腹腔内)に脂肪がたまる「内臓脂肪型」が多いとされています。女性は、エストロゲンという女性ホルモンが出ている間は守られていますが、閉経後は男性と同じような肥満体型になり、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が増えてきます。また、肥満に伴って血圧やコレステロール、血糖値が高くなり、高尿酸血症や睡眠時無呼吸症候群、腰痛や関節痛の原因にもなります。


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こうした背景には、生活習慣の変化があります。まず、食生活ですが、ご飯と味噌汁、目刺といった昔ながらの食事より、ハンバーガーなどがよく食べられるようになり、動物性たんぱく質や動物性脂質の摂取量が一気に増えました。ここで注目すべきは、炭水化物の摂取量が年々減っていることです。動物性たんぱく質や動物性脂肪の摂取量が増えても、米のご飯を食べる量が減っているので、総エネルギー量としては変わっていないことになります。 


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では、なぜ太るのか。肥満は車社会と関連が深く、アメリカのように自動車依存率が高い国では肥満も多くなります。日常生活の歩行数が減るとコレステロールが上がるとのデータもあります。
また、肥満の増加には、家事労働に使われるエネルギーの減少も影響しています。60年ほど前、日本ではかまどでご飯を炊いたり、井戸のポンプをついて水を汲み、洗濯板で洗濯したり、火鉢の火を練炭でおこしたり、子供も大人も家事でおおよそ500kcalは消費していました。ところが、現在はボタンひとつですから、以前と同じ量を食べていれば、太るのは当たり前です。


ここまでの気づきとして、私たちは食べすぎているわけでなく、生活が便利になりすぎて、運動不足、エネルギーの消費不足になっているということです。そのため、肥満やメタボリックシンドロームになり、高血圧や糖尿病、脂質異常症、心臓病などを招くことになります。


肥満を防ぐ食事では、一日の総エネルギー摂取量を自分で把握することが重要です。たとえば、軽いデスクワークをする人なら、標準体重あたり25~30kcalのエネルギー量が必要です。
患者さんのなかには「食べ過ぎていない」「食べる量は昔と変わらない」とおっしゃる人もいますが、食べる量が変わっていないから太るのです。歳をとったら基礎代謝量が減るため、食べる量を減らさなければ太ります。また、日本は長時間労働で、夜遅く、たくさん食べるのも問題です。食事のカロリーはもちろん、お酒などの嗜好品も、量とカロリーを把握しておくとよいでしょう。


栄養も大切、食べることも大切ですが、人間は活動する動物であり、食事とともに大事なのは活動量です。食べすぎて、運動で体重を減らすのは至難の業ですから、ふだんから、運動することで筋肉をつけ、基礎代謝をアップさせることで、太りにくい身体を作ることが重要です。

まとめ

  • 平均寿命は延びたが、高齢人口の増加、生活習慣病は増加している。
  • 健康寿命を延ばすためには、生活習慣を再考し、気づくことが大切。
  • 人は生きるために活動するように作られている。活動することから始めましょう!

講師

drchashiki.png 九州大学大学院 医学研究院 保健学部門
樗木(ちしゃき)晶子 先生

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